ココニコのキモチ

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いろどり工房ココニコ管理人(ボランティア)のキモチブログです。日常生活と本職(教育分野)の気づきのお話をしています。

歴史の重みが崩れていった瞬間のお話

4月の最初の金曜日。
平日だけれど、お休みの日。
やりたいことがあって、家でパソコンと向き合っていると、我が奥様が話しかけてきた。

「今日はどうするの?」
予定はないと言おうとして、「今日はいい天気ね」と朝に言われたことを思い出し、「どこかに散歩に行こう」と言い直しました。

 

ということで、を見に行くことになりました。

 

調べて見ると、家から一番近くて、有名な桜の名所は「小金井公園というところにありました。

小金井公園は名前には「小金井」の文字がありますが、小金井市だけでなく、一部分は小平市武蔵野市西東京市と4つの市にまたがっていました。
面積は約80ha。
数字だけでは広さがわかりにくいですが、日比谷公園の4.8倍もありました。


この公園が桜の名所として有名なのだそうです。
50種類、約1700本の桜が植えられているのです。
園内には「桜の園」という場所もありました。
確かにいいお天気でしたので、電車ででかけました。

 

西武新宿線花小金井駅で下車。
20分ぐらいの道のりを歩いて行きます。
途中からまっすぐな道になりました。

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まっすぐな道が続く様子は気持ちがいいものです。


小金井公園の手前でこんな標識にに出くわしました。

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石神井川の上流端です。
標識の下をのぞいてみました。

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上流端、つまり川の端っこはこんな風になっていたんですね。
東京を東西に横断し、隅田川にまで注ぐ川の端っこです。
びっくりでした。
川の端っこは湧き水のようなものでも出ているかと思っていたのですが、川の端っこは、コンクリートで固められていました。
ふむふむ。


「これでは大雨の時にすぐにあふれちゃう
我が奥様がこんな感想を話していました。
何か見てはいけないものを見てしまったような気分です。
そそくさと小金井公園に入ります。
しばらく行くといこいの広場というとても広い空間に出て、その周りに桜の木があちこちにありました。

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桜を眺めていると、こんな標識が。

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見えない貯水池が地下に眠っているそうです。
標識を読んでみます。

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この公園には、はげしい雨が降った時、たくさんの雨水がいっぺんに「石神井川」へ流れこまないように左の図のようなしくみがつくってあります。
 雨が降りはじめると雨水は、地下につくった施設の中に入ります。この施設には、水を土の中に浸みこませるはたらきがあります。したがって少しの雨であれば、雨水はみんな土の中に浸みこんでしまいます。しかし、たくさんの雨が降ってきた時は、水の浸みこみが間に合わなくなり、雨水は皿のような広場に貯まって、いこいの広場が池のようになります。
 雨がやむと水はゆっくりと時間をかけて少しづつ「石神井川」に流れていきます。そして、貯まった水はいつのまにかなくなってもとのとおりになり、池は消えてしまいます。
 つまり「見えない 貯水池 」というわけです。
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なるほど、先ほどの石神井川の上流端で、我が奥様は
「これでは大雨の時にすぐにあふれちゃう」
と言っていましたが、すぐ近くにこの「見えない貯水池」があるからある程度は大丈夫なのでしょう。

 

しばらく歩いて行くと、お堀のようなところの向こう側にいろいろな形の建物が見えてきました。


何かの施設の前に出てきました。
施設の両側に丸い形の大きな木がありました。

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キンモクセイの木でした。
なんと美しい丸い木でしょう。
ほぼまん丸です。
キンモクセイの花が咲いたらきれいでしょうね。

 

さて、入り口に丸いステキなキンモクセイの木があった施設は、江戸東京たてもの園でした。

江戸東京たてもの園の入り口から前の広場を眺めるとこんな雰囲気です。

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桜を見に来たつもりが、失われてゆく江戸や東京の歴史的な建物を移築して保存している施設に突入しようとしています。我が奥様は私の興味関心を理解してくれているのか、素直についてきてくれます。
ひとり400円でした。


入り口で管内の説明書をもらい、ぱらぱらとめくり確認しましたが、どう考えても半日コースになりそうな建物の数でした。

でも午後にいいお天気ねで始まったお散歩なので、江戸東京たてもの園はあと2時間ぐらいしか開いていません。

どこに行くか思案していると、「好きなところに行ってね」と奥様は言ってくれています。
説明書でここは行きたいという場所が何カ所かあったのですが、これはすごい!というひとつの目的地を定めて、そこに行くことにしました。目的地までの道すがら、一応、ちらっと建物を外から見たりしましたが、目的地へ一直線です。

 

この建物です。

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ある歴史上の人物が住んでいた邸宅です。
入り口に待ち時間○○分という立て札があったと奥様が言っていましたが、今日は平日。がらんとしています。好き放題に見て回れます。土日は大混雑なのでしょう。
その歴史上の人物を思いながら、部屋の前、入ってもいい部屋、廊下・・・あちこちを眺めてまわりましたが、そのうちその場に座って写真をパチパチとりながら、物思いにふけります。

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奥様はああ始まった・・・という感じで何も言わずに自由にさせてくれています。
家というのは、住む人の視線で見て、感じないといけないと思うのです。だからその場に座ります。歴史上の人物が住んだ場所に座れるというのはすばらしいことです。

 

座りながら、iPhoneでその歴史上の人物について調べます。
便利な時代です。
やっぱり・・・。
私が行くべき最終目的地は二階でした。

 

二階に上っていきます。
すごく急な階段です。

 

昭和11年2月26日。
この階段を勢いよく登っていった若者の集団がいました。


2月26日。
そうです。
この邸宅は二・二六事件で暗殺された高橋是清の家なのです。

 

総理もつとめたことがある高橋是清二・二六事件当時は大蔵大臣でした。
世界恐慌で混乱する日本経済をデフレから世界最速で脱出させたことで有名ですが、インフレの兆候が出始めたので緊縮政策をとろうとして、陸軍などの軍事予算の削減を図りました。このために恨みを買い、襲撃の対象となったのです。

 

二・二六事件の襲撃部隊が駆けあがった階段はこんなに急だったのかと感慨にふけりながら、二階に進みました。
高橋是清は胸を6発撃たれ、軍刀でとどめを刺され暗殺されました。
享年83歳でした。
愛称は「ダルマさん」で国民から親しまれていた政治家です。

 

二階に入るとすぐのところに説明が書かれた立て札がありました。

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寝室と書斎が二階にあり、ここで暗殺されたのです。

 

二階でかなり長い間うろうろしたり、座ってじっと考えにふけったりしていました。
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我が奥様もあまりにも長くいるので、じっとたたずんでいました。

高橋是清の書いた書の複製ではありますが、一行書「不忘念(ふもうねん)」の前で静かに見入っています。

思わず、カメラをパチリ。

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二階から外を眺めるとこんな感じです。

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当時は赤坂にあった高橋是清邸ですが、どんな風景が見えたのでしょう。
あまりにも長くいたせいでしょうか。
あやしい二人と思われたのか、施設の管理をされている方が二階にやってきて、ちらちらと私たちのほうを観察していました。


私も満足できたので、では下に降りようかと、思い始めた時、二十代半ばぐらいの若いカップが二階にあがってきました。
入り口の立て札を見ると、カップルの男性のほうが驚愕の言葉を発しました。

 

「ここ事故物件だよ」

 

目が点になりました。
そういう発想があるのか!
ただただびっくりでした。

 

歴史にふれることができ、高橋是清が最後を遂げた空間で歴史の重みの想いにふけっていた空気感ががらがらと音をたてて崩れていきました。

 

「えっここ事故物件なの?」
カップルの女性が男性に聞いています。

違う!
そんな発想をしてはいけない!
歴史を感じなさい!
・・・・

本当はそう言いたかったのですが、相手は見ず知らずの方々。それにもう大人。

 

我が奥様はカップルの会話にまったく気づいていない様子でしたが、施設の管理の方は気づいた様子で、目を大きくまん丸にしていました。

 

歴史の重みにひたっていたのが、気持ちが乱れたので、カップルが下に降りていくまで、二階で過ごすことにしました。
もう一度、気持ちを歴史に向き合わせ、落ち着かせてから、高橋是清邸を後にしました。

 

この日は17時半が閉館の時間。
結局、高橋是清邸ともう2箇所だけを慌ただしく見てオシマイになりました。
我が奥様が着目したのはこんな特徴的な場所でした。

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この畳の敷き詰め方。
なるほど、おもしろい。

 

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この窓の鍵。
確かに昔はこんな鍵がありましたね。

 

まったく違うことに着目するので、一緒にいるとおもしろいです。
外にでると、金曜日だというのに、桜のまわりに人がいっぱいでした。

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桜を見に行ったつもりが、高橋是清邸にほとんどの時間を使い、とどめが「事故物件」という言葉。
なかなかステキな金曜日のひとときになりましたが、我が奥様はどう感じた一日だったのでしょう。。。