ココニコのキモチ

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いろどり工房ココニコ管理人(ボランティア)のキモチブログです。日常生活と本職(教育分野)の気づきのお話をしています。

白紙のお話シリーズ①白紙が肝になる作文

文はやだ!
絶対、嫌!

小学校5年生の男子がやだ、やだ、やだと言い張ります。

先日、勤務先が運営している学び方を教える塾のようなのですが、ちょっとひと味違う施設でこんな小学生に出会いました。
たまたま、その小学校5年生は「作文」がその日のテーマでした。

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この日、この施設ではコーチングをする大人が不足していたので、私がその少年と向き合う役割をしたのですが、やだ、やだ、やだ攻撃を私にしてきます。
はじめて話す見知らぬ大人に対して、やだ、やだ、やだとはっきり言える少年。
まず、この行動ができる事は、すばらしい素質があると言えます。
通常は若者がコーチングをしているのですが、いきなりかなり年配の大人と向き合い、い・や・だとはっきりと言える。
すばらしいことです。
まず、この事実を褒めたところ・・・(えっ?、いつもの相手と違う雰囲気・・・)と悟ったのでしょう、まじまじと見つめてきます。
で、こちらとしては、ニッという表情をしてみたところ、少年もニッとしました。
(ふむふむ、よしよし、素直でよい子だ・・・)

この小学校5年生の男子にとっては、文章を書くことがとてつもなくつらかったのです。

ものすごくつらい。
つらいのです。
文章を書くのが好きという人には、この悩みは絶対にわからないものです。
大昔。
数十年前。
まだパソコンの世界にWindowsがない頃、小中学校や教育委員会の先生方と「作文CAI研究会」なる組織を一緒に運営していたことがあり、それ以来、作文指導をする先生方と大勢出会いましたが、この子供の「書くことのつらさ」を本当にココロから理解できる先生にはなかなか出会えませんでした
言葉として「書くことのつらさ」はわかっても、ココロからは理解できないものなのです。
書くことに限りませんが、子供の様々なつらさがココロから理解できる先生に出会えたとしたら、その子供にとってはその出会いが一生の財産になります。

同じ書けない人でも、理由は色々とあります。

今回の小学校5年生の理由は単純です。
ただ、ただ書けない。
書けないのです。
手が動きません。
脳も書けるわけがないと叫んでいます。
この感覚がわかりますでしょうか。
とにかく書けないのです。
書けないと信じ込んでいるのです。

こういう時に書きなさいと言うのは無意味です。
アドバイスをすればするほど、逆にやる気が低下します。
原因を見つけて、接する大人がゆっくりと対処することが必要です。

今回の場合は原因は2つと診断しました。

この少年の場合、作文を書けるようにする時の大事な基礎力が不足していました。
語彙力です。
言葉をたくさん知っているかは大事な要素です。
言葉を知らないから、文章を書けない。

但し、この少年の場合は、結果的に「書き始めることができる語彙力」の力が弱かっただけでした。
「書き始めることができる語彙力」の力が弱いということが原因のひとつ目です。

子供の文章は見方によってはとても幼稚です。
一生懸命やっても、笑われたら恥ずかしい。
クスッと笑われたことがあったようです。
語彙力はある程度ありましたが、書くのは恥ずかしいことだと思いこんでいます。
小学校5年生になるまでに、そうした恥ずかしい経験があって、体に染みついているのです。

解決する方法はひとつだけです。
どんな文章でも褒める。
子供に接する大人が褒めるところを見つけて、必ず褒めることが解決策の第一歩になります。

なぜ書けないのかの原因のもうひとつは、「書いたことがない」からです。
書く経験が不足しているのです。

作文でなくてもよいのですが、ある程度まとまった量の文章を書くというチャンスがものすごく不足しているのが今の子供を取り巻く環境です。
「書いたことがない」から、書けないのです。
最初はなかなか書けません。
書くためにはどうしたらよいかを話しても、最初はなかなか書けません。

この日は私のファミジィメソッドの中の書くについてのメソッドをこの少年と会話をしながらアレンジして、約1時間の作文教室になりました。
かいつまんでご説明しましょう。

1.テーマを決める
この日のテーマは課題として元々テキストの中に提示されていました。
「これまでに一番感謝したこと」でした。
なかなか難しいテーマです。
テーマは決まっていて、逃げられないので、ステップ2に移り、具体的に「感謝したこと」を洗い出していきます。

2.白紙に材料を書き出す
感謝ってどういうことだろうの問答を少年とゆっくりとして、手かがりとなる感謝の経験を発見していきます。
思いついたことを箇条書きにします。
ひとことのキーワードでもよいです。
この段階では、いつ、どこで、誰に感謝したことなのかははっきりしていません。
テーマを一段掘り下げた「感謝したこと」を具体的にしていきます。
会話をしながら、白紙にキーワードだったり、短文を書き出していきます。
作文の達人は、この会話が自問自答になります。
大人であればひとりブレストです。
今回の少年はこの作法が未知の世界なので、私と会話をしながら、でも自分で気づき、私が「すごい」「へぇ~」「いいね」と言う言葉に後押しされて、どんどんと白紙の上に文字が増えていきます。

3.材料を選ぶ
あっという間に白紙が文字でいっぱいになりました。
嬉しそうです。 ←これが大事です。
白紙をちょきちょき切って、私と会話をしながら、本人が分類していきます。
全て自分で作業をしていきます。
頭で考えるのではなく、体を使って考えているので、能動的な動きです。
嬉しそうです。 ←これが大事です。
大事なのは、これとこれとこれだということが本人の意志で決められたことです。
ここでコーチは反対してはいけません。褒めたり、驚いたりします。
本人は嬉しそうです。 ←これが大事です。

4.材料をふくらませる
書くと決めた事柄をもっと、もっと具体的に思い出す段階です。
いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように・・・。
自分のキモチも書き出していきます。
楽しかった、おもしろかった、びっくりした、うれしかった・・・
本当にふくらませていくと、その子供にしか表現できないキモチの言葉が出現します。
すごい言葉が出てきたら、最大限の称賛の言葉を伝えます。
嬉しそうです。 ←これが大事です。

5.材料を並べて、書く順番を決める
起承転結がベースですが、この日はこの小学生が野球少年だったので、
へぇ~とかワクワク、試合解説、変化球を投げる、試合結果のひと言解説
という形で起承転結を説明しています。
起承転結が合わない状況の時は、能楽序破急の作法を伝授しますが、説明しているとさらに長くなるので次に進みます。

6.下書きを書く(練習のつもりで書く)
下書きというのがポイントです。
文章が書けない。最初の一文字が書けない。
こういう場合の理由は意外とひとつです。
いきなり本番のつもりで書こうとしているからです。
下書きとか、練習だからと思うと、書けるものなのです。
今回は会話をしながら、はじめの一歩の後押しをそっとしています。

7.下書きを見直す
原稿用紙の使い方
句読点の位置はいいか
長すぎる文章はないか
話の流れがおかしなところはないか
・・・
チェックポイントはファミジィメソッドのノウハウの部分になるので、一般的なことだけにしておきますね。

8.清書する
作法をていねいに進んできた小学校5年生。
会心の出来だったのでしょう。
嬉しそうです。 ←これが大事です。
満足感あふれる顔つきになっています。 ←これが大事です。

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作文の勝負を分けるのが、2.で登場する「白紙」です。
「白紙から始める」のがポイントです。
先入観のない状態で、白紙から始めて、白紙でどこまで向き合えるか、が大事です。
白紙で成功したら、気づいたら立派な作文ができているということになります。

作文は書く力だけでなく、観察する力、イメージする力が必要になります。
書く練習をくり返ししていくと、これらの力が自然に伸びていきます。
だから、書けるとも言えます。
書く練習はなかなかしずらいものがあります。
そんなご家庭には毎日、その日のうれしかったこと、びっくりしたことなどを保護者が聞くという習慣を作るとよいでしょう。観察する力、イメージする力が伸びます。書くための基礎力のひとつなので、書くための基礎力にもなります。

 

さて、実は今回のブログは本来は別のことを書こうとしていたのですが、途中から作文教育について書き始めてしまったがために、書くべき事にたどりつきませんでした。ということで、今回のお話は次回に続きます