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いろどり工房ココニコ管理人(ボランティア)のキモチブログです。日常生活と本職(教育分野)の気づきのお話をしています。

続:医師国家試験と高校入試

回は、医師国家試験と都立高校入試の倍率、神奈川県の私立高校無償化についてのお話でした。 


この話題はこれで終わりにしようと思ったのですが、質問をそれぞれ頂いたので前回の続きになるとどうかは定かではありませんが、書いてみます。

 

医師国家試験が終わり、後は結果を待つばかりになりました。
合格率は例年90%前後です。
この数字を見ると合格はあたり前のようにうつるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
医学部は6年間です。
6年間、地道に勉強すれば難しくありませんとは言えるかもしれません。
逆に6年生の時だけの勉強とか、半年しか勉強しなかった医学生はかなり厳しかったのではないかと思います。

 

普通の学部と違い、医学部は医師になるための職業トレーニングに特化したカリキュラムになっています。本人の気持ち次第で、やりたいことが学べる普通の学部とは異なります。
医学部は医師養成機関なのです。
医師になるには、医師国家試験に合格しなければいけません。

 

途中、大学4年の終わりには、CBT・OSCEという二大試験があります。

CBTとは、Computer Based Testing。
パソコンを使って受験する試験です。

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パソコンを使って、たくさんの問題データベースからランダムに選ばれた問題を解きます。隣の学生とは解いている問題が違うという仕組みです。
出題の仕組みもとても複雑怪奇でよく考えられたロジックで出題され、320問との勝負をするのがCBTです。

 

320問のうち、240問はプール問題と呼ばれ、前年度までの試行で正答率などにより良問と判定された問題からの出題で、採点対象です。残りの80問は新作問題で、次年度以降のプール問題候補で、採点には含まれません。
よく考えられています。
CBTは、大学1年から4年までの4年間で習ったほぼ全分野が範囲の筆記試験をコンピュータ技術を使って試験するというものです。

 

日本では、小学生の時から何度も何度も試験に遭遇します。
試験には評価するための試験と、鍛えるための試験があるように思います。
出題側、試験を受ける側にとっていつも鍛えるための試験であって欲しいと思いますが、同じ学校でも隣り合わせのクラス同士でさえ、評価されるためだけの試験だったり、もっと伸ばそうとする試験だったりしています。試験をする側のキモチ、心意気、人としての器の違いなどが原因です。

 

CBTは試験の仕組みの企画は間違いなく、鍛えるためを考えて作られています。

 

もうひとつのOSCEはオスキーと読み、Objective Structured Clinical Examinationの略です。客観的臨床能力試験のことで、実技試験です。
模擬的に実際に診察をします。現場での診察ができるように学んできているかを試験します。

 

CBT、OSCEの二大試験の他にも年間を通して、6年間、試験だらけです。
全国の医学部ではかなりの人数が留年したり、6年で卒業できなかったりしていますが、医師という人の命をあずかる職業に向けた学問なので厳しくて当然なのかもしれません。
大学にとっても、合格率の結果によって国から支援されるお金に違いがでるため、大学経営の観点からも必死なのです。

 

さて、医師国家試験ですが、これもかなり面白い仕組みでおこなわれています。
絶対評価相対評価を両方とも取り入れているという特殊な試験です。

医師国家試験には「必修問題」というものがあります。
どれが必修問題なのかは知らされませんが、必修問題とされた問題を80%取れなければ、総合得点がよくとも不合格とされます。

 

そして恐ろしいのが「禁忌肢」という問題です。
これを間違えたら患者を死に至らしめるような内容の問題、間違えたら医師としての倫理に反すると見られてしまう問題が禁忌肢の問題です。これを3つ以上間違えると、どんなに総合得点がよくても即座に不合格になります。
人の命を預かる医師になるための試験なので、うっかりミスはあり得ないという姿勢が作問に流れています。
今年は2日間で400問が出題されていますが、どこに禁忌肢の問題がひそんでいるのかはわかりません。

 

時間割はこんな感じでした。
1日目
Aブロック 165分
Bブロック 95分
Cブロック 140分
2日目
Dブロック 165分
Eブロック 100分
Fブロック 155分

2日で、6回、試験があり、ブロックごとに分類された問題がバランスよく配分されています。

 

問題の分類は大雑把に言うと、3種類あり、
必修問題は医師として必ず知っておくべき知識の問題、
臨床問題は、症例文を読ませ、その症例の対応や知識を問う問題、
一般問題は、短文で知識を問う問題です。
必修問題では最近、医学英語が出題されるようにもなりました。

 

ものすごく考えて配分されています。
昨年は3日間500問でしたが、試験の仕組みが変えられて、CBT、OSCEが定着してきたのでということもあり、2日間で400問に減らされた形で取り組んでいます。
単純に1日減ってよかったとはならず、1日に解く問題数は増えているので、体力勝負は過酷さを増しているので大変だったろうと思います。

 

必修を除く臨床、一般問題は相対基準で採点されているのも特徴です。
必修は8割正解が必須ですが、臨床・一般問題は相対基準なので、ボーダーラインは年によって変動があります。7割ぐらいかなというところです。

 

医師国家試験の不思議なところは、採点除外される問題が発生するのが通例となっていることです。大阪大学京都大学の入試で問題内容に不備があったりしましたが、医師国家試験では毎年、正々堂々と問題内容が不適切なものが発生するのは起こるものだという理由によって、採点除外とされる問題が発生します。多い時で20問近くの年があります。

 

選択肢が不明確で正解が得られない、設問が不明確で正解が得られない、などの時に採点対象から除外されます。採点作業の長い期間の中で慎重に判断されます。
問題としては適切でも必修問題としては妥当でない時は、正解した受験者は採点対象に含め、不正解の受験者は採点対象から除外される問題もあります。
必修問題では、問題としては成立しても、内容が難しすぎる場合は必修問題として妥当でないとして、正解した受験生については採点対象に含め、不正解の受験生は採点対象から除外されたりもします。

 

終わってから、あの問題は実は・・・ということがわかるのですが、試験問題には不適切なものが発生するものなのだという姿勢で接しているのは、世の中の試験でもあまりないと思います。
医師としての的確さを見るための試験が医師国家試験なので、問題の内容や難易度によって、採点に含まれないことがあるという姿勢を持っているのです。
さすがだと思います。

 

こうしてみると医師国家試験で不合格になった場合は、単純に勉強不足だったと認識することが大切だと思います。
協調性があり、健全な人間関係を持った医学生は最後は合格していて、逆にガリ勉タイプで1人で勉強しているような医学生は、まわりの情報にうとくなるのか、苦戦している・・・ということを以前、医学部の先生から聞きました。

 

今年、医師国家試験を受験した医学生は、今、どうしているでしょうか。
残りの期間、適度に青春を謳歌してはいかがかと思います。
ご苦労様でした。

 

医師国家試験の話題はこれくらいにして、次は都立高校入試。
都立高校はいよいよ今週末の金曜日が一般試験です。

 

前回、気になった高校のひとつとして都立調布北高校をあげました。
一昨年が1.71倍
昨年が1.32倍
今回が1.17倍 → 先週、1.55へ上昇

 

低倍率化が進んでいるということを書きましたが、願書の取り下げと再提出が先週あり、37人が新たに出願したので、倍率が1.55に上がりました。倍率だけで判断した方が少ないことを祈るばかりです。行きたくて行きたくてしかたなかったけれど、オール4はないと勝負が難しい高校なので、私立の押さえもしたし、残りの日数で何としても得点力を上げると決心して、行動しているかどうかで決めたのならよいのですが。

 

低倍率にココロが揺れて、出し直したのなら、残りの日数、当日の体力は残す生活はした上で、とことん今までにないほど集中し、学んで欲しいと思います。
結果には必ず理由があります。
とことん集中するための、ご家族の協力も必要です。過去に2倍以上の倍率の難関を突破した生徒を何人も担当しましたが、本人、ご家族には共通点がありました。この部分はノウハウになるので、この話はここでおしまい。

 

一方、神奈川に目を向けます。
前回は無償化の報道を取り上げましたが、今回の報道に限らず、無償化の動きは、何らかの形で首都圏は加速化するでしょう。
先週末、神奈川は県立高校の入試が終了しましたので、本当の勝負の3年後に向けた準備と助走を始めましょう。

気になったので、ちょっと入試問題をみてみましたが、上位層は確実に得点し、上位層のちょっと下あたりからは、全体を見渡して捨てるべき問題は捨て、解ける問題を確実に取れたかどうかで予想外の点数のばらつきがでるような問題構成だと思いました。


社会は難しくなったように思いましたが、全体的には解きやすくなっています。優しい、難しいがバラバラに出てきていて、見切りをつけないといけない問題に手間取っていると損をしたと思います。

 

例えば、数学の証明問題。

昨年の証明問題の解答欄はこれ。

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今年の証明問題の解答欄はこれ。

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証明問題が全て証明を書き出す形から、穴埋め式の部分証明になりました。


やった〜と思って、気をぬいた中3生もいたでしょう。
模擬試験で実践を重ねてきていれば、こういう一見易しくなったと、当日勘違いするような変化は実は怖いものです。
こういう時は、冷静に解答しないといけないということが模擬試験の経験を重ねることで会得できているとよいのですが、どうだったでしょう。

 

一番大事なことは、高校入試は単なる通過点ということです。
高校入試は狭い地域での戦いですが、大学入試は広い地域での勝負になります。
中高一貫校の生徒はカリキュラム進行が早いので、有利です。
将来の道をまず考え抜いて、緻密に計画を立て、本当の最初の勝負に向かって欲しいと思います。

さらなる健闘を祈ります。