ココニコのキモチ

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いろどり工房ココニコ管理人(ボランティア)のキモチブログです。日常生活と本職(教育分野)の気づきのお話をしています。

受かるための試験と落ちないための試験

江で2月まで運営していた小中高校生のための秘密基地には医学部志望の生徒もいました。このブログもご家族でご覧になっているので、今日は息子の医師国家試験の記憶が鮮明なうちに医学部について記しておきたいと思います。

今年の医師国家試験の合格率は88.7%。
過去10年で最低だそうです。
全体の受験者数は9618人で、8533人が合格。
このうち新卒者は受験者数8828人で8104人が合格。

医師国家試験の実態を知るにつれ、難しい職業だとつくづく思いました。

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中学受験、高校受験、大学受験は合格するための戦いですが、医師国家試験の場合は落ちないための戦いです。
これは似ているようで、ちょっと違うというか、まるで違います。
準備や戦い方がそもそも違うことになるのですが、試験は3日間にも及び、医学に関する幅広い知識を求められるため、過酷な勉強が必要となります。大学受験が終わった後の6年間のほうが厳しい生活が待っているのです。10年もたつと医師国家試験の内容も違っているように医学は進歩をし続けているので、医師になっても勉強の連続です。

大学受験は2020年に大幅に変わり、それに合わせて中学受験や高校受験に変化が始まっているのですが、医師国家試験はかなり以前から改革が始まっていました。今年の合格率などの結果はこの影響もあるのでしょう。

2017年2月は第111回の試験でした。
今年は知識ではなく、思考力の有無によって差がつくような問題が増えてきています。
医学教育では実習が大事ですが、実習での事実把握、状況分析、即時判断、思考訓練をきちんとしているかによって試験結果に大きな差が出てきているそうです。実習での経験を元に、その場で考え、実習の経験を応用しないといけない問題とでも言えばいいでしょうか。
大学入試改革のトレンドは実は医学教育の世界で先行実施しているのではと思います。

医学部では4年修了時に5年生から臨床実習をおこなうのにふさわしい力を持っているかを判定するため、全国共通のCBTとOSCE(オスキー)を受けるように現在は仕組みが変わっています。
CBTはComputer Based Testingの略で6分野の知識についてコンピュータで試験を受けるものです。
OSCE(オスキー)は客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination)のことです。技能試験のことで、実際に問診をしたりする様子を採点者が観察するテストです。

どこの大学の医学部も毎年、留年がかなりでます。
さらに、4年終了時の全国共通のCBTとOSCE(オスキー)でふるいにかけられ、6年の秋の卒業試験も容赦ない厳しさです。
そして、最後に2月の医師国家試験。
6年間、必死の学習と試験の連続が医学部です。
偏差値で医学部を選ぶのではなく、志で選んで欲しいと切に思います。
そうでなければ、6年間で燃え尽きてしまうでしょう。

来年2018年の第112回医師国家試験は実は改革がさらに進みます。
現在は3日間で500問の試験ですが、2日間で400問になります。
次回からは基礎的な知識は4年修了時のCBT試験で能力を判断され、臨床実習を踏まえた応用問題を6年卒業時の国試でという形に変化します。
よくよく観察すると医学教育は世界の最先端のテストの作法を取り入れ、試行錯誤をしながら改革を進めてきています。大学入試改革もこの流れをくんでいると思います。
いわゆる思考力、応用力は一朝一夕では身につきません
日頃から考える習慣を付けておかなければ磨かれないものなので、時間はかかるし、力の差がつきやすいやっかいなものです。

自ら学ぶ力、思考力、未来を作る力などが重視され、中長期的に見ると、格差社会の質の変化が始まっていると思います。
貧富の差とかではなく、学び続ける力という観点での格差社会です。
学び続ける力があるなしでの格差社会
今以上に厳しい格差社会に気づいたらなっていたとなるのではないか・・・こんな気がしています。